WHAT’S UP

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お知らせ

今年(2022年)のGW初日(4月29日)に、東北電力・中国電力・四国電力・九州電力が管轄する4地域で翌日に出力制御を実施するよう指示が出たことで、弊社にも太陽光発電所のオーナー様から出力制御に関して多くのお問い合わせが来ました。そこでこの「出力制御」に関してざっくりとわかりやすく解説いたします。

出力制御とは太陽光等の発電所の出力を一時的に強制停止する制度

「出力制御」とは、電力出力(供給)の一時的な停止、もしくは抑制を行うことを意味します。
この一時的な停止は太陽光発電所には必ず設置されているパワーコンディショナにおいて行われます。

出力制御という制度そのものは、2015年1月に「再生可能エネルギー特別措置法」が改正されたことにより対象などが設定され取り入れられましたが、FIT初期の対象外事業者も、あらかじめFIT法ににおいて「当初から出力制御に協力する」旨があるので、急に設けられた制度ではありません。さらに2020年の制度改正の際に出力制御の対象が拡大し、10kW以上の太陽光発電設備がすべて出力制御の対象となりました(経済的出力制御)。この改正された制度は、2022年4月から施行されています。

そもそも、なぜ出力制御は必要なの?

そもそもなぜ、出力制御は必要なのか?太陽光発電でたくさんの電気が発電できる時に、なぜ電力の出力を抑制しなければならないのか・・・?

実は、電気は発電と消費が同時に行われるため、発電した電気を貯蔵することができません。そのため電気は「同時同量」という原則のもとで管理されています。つまり、変動する消費量にあわせて発電量を常に一致させておく必要があり、このバランスが崩れると大規模停電が発生してしまう恐れがあるのです。需要に対して供給が少なくなると周波数が低下し、反対に需要に対して供給が多くなると周波数が上昇してしまいます。そして、適切な周波数が保てなくなると、大規模停電が発生してしまうというメカニズムです。電力会社では、消費量(需要)を予測し、発電計画を決めて、発電所の出力(供給)を調整して需給バランスを保っています。すなわち、電気の需給バランスを、常にいい状態に保つために「出力制御」が必要になるというわけです。

2022年4月1日に施行された経済的出力制御とは?

先に述べたように、2022年4月から出力制御の対象が拡大し、10kW以上の太陽光発電設備がすべて出力制御の対象となりました。これまで出力制御の対象外だった発電設備は、出力制御機器の設置が義務付けられていないこともあり、オンラインで出力制御できる出力制御機器が設置されてないケースが多数です。

簡単に言うと、出力制御対象外だった発電設備は手作業で発電機能をオフにする必要があります。(オフライン事業者)
2020年の制度改正に伴い、オンラインの遠隔操作で出力制御できる機器を設置しているかどうかで分けて、オフライン事業者とオンライン事業者に整理され、実務上の負担軽減や実需給に近い柔軟な調整ができるよう、経済的出力制御という運用方法がつくられました。将来的には全国すべての発電所で制御を分散する方向性が明確になり今年度より全国で出力制御対象ルールが撤廃されました。政府が積極的に進めている各地域間の設備増強が進むことで全国で分散制御が実現し、再エネ主力電源化における事業者間の公平性が確保されると言われています。

出力制御はどのようなときに実施されるか?

国が定めたルールでは、まず火力発電の出力を抑えて、余っている電気を他の地域に送る→次にバイオマス発電・太陽光発電・風力発電の順で再生可能エネルギーの発電を出力制御するとなっています。
出力制御は、冷暖房を使わなくてもよい春や秋、特に電気使用量が多い企業の活動が少なくなる祝日や土日が対象となりやすいです。相対的に需要が減る日に好天になると、供給が多くなりすぎてしまう可能性が高いからです。実際に発電を止める指示が出る場合は、前日までに発電会社に連絡されることになっています。

実際には出力制御は九州のみで実施されていたが、今後は・・・?

これまでどのくらい出力制御が実施されていたかをみると、2018年に太陽光の導入が早く盛んであった九州電力が実施したのが初めてです。その後の4年間、他の電力管内では実施されたことはありませんでした。
しかし、今年になって四国電力で4月9日に、さらに東北電力や中国電力でも実施されました。
もちろんこれは、再生可能エネルギーの発電所の急増の影響です。九州電力を含めて出力制御を実施した4地域では、太陽光と風力を足した発電能力が2021年の電気を使う量が最も少なかった日の需要を上回っているためです。

政府は再生可能エネルギーを主力電源として位置付け、2030年度にはその比率を20年度の倍近い36〜38%に、太陽光を14〜16%に増やす計画を推進していますので、現在、ネックとなっている地域間の連系線の増強や蓄電池の普及などについて積極的に国の予算を投入する方針です。

今後、連系線の増強などの施策が急ピッチで進めば、経済的出力制御がテーマとしている事業者間の公平性の確保に関しても一層の進歩が見られると期待できます。そうなると、これまで九州を中心に施行されてきた出力制御の対象も全国に分散されることが考えられますので、九州電力管内の事業者にとっては出力制御せざるを得ない機会が徐々に減っていくことが期待されます。