2021年度
FIT制度改訂

2021年度FIT制度改訂

2021年度FIT制度改訂の概略

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2021年1月22日に開催された第67回 調達価格等算定委員会で示された、『2021年度以降の制度の方向性案と、それを踏まえた調達価格等についての委員長案』が経済産業省から公開されました。ご存知のように、2020年度もFIT制度は継続されましたが、①30%以上は自家消費をしなければいけない②災害時に地域で使えるよう自立運転機能付パワコンをつけなければならないという2つの条件からなる「地域活用要件」を満たさなければならないという条件が付与されました。2019年度まで、投資案件として太陽光発電普及の一翼を担ってきた10〜50kWh(いわゆる低圧)の太陽光発電は、この改訂、特に発電した全量を売電できないとする「地域活用要件」によって、大きく性格が変わることになりました。今回示された案でも‘2021年度は現行の地域活用要件を維持して様子を見る’=すなわち、引き続き、30%以上は自家消費をしなければならないことになりました。

FIP制度導入は2022年度。 対象は1,000kW以上(高圧・特別高圧)! 希望する事業者については50kWh以上の事業者も。

FIP制度は、卸電力取引市場や相対取引で再エネ発電事業者が市場に売電した場合に、基準価格(FIP価格)と市場価格の差額をプレミアムとして交付することにより、投資インセンティブを確保するものです。つまり『再生可能エネルギーの自立化(市場価格取引)へ』のワンステップです。気になる具体的な方向性ですが、今回示された案では、各区分等の基準価格(FIP価格)は、FIP制度導入当初は、各区分等の調達価格(FIT価格)と同水準とし、また、各区分等の交付期間は、各区分等の調達期間と同じとすることが適切だとされています。えっ、同水準ということはFIT制度と実質は変わらない???実際にどのような運用となるかは、正直なところ来年になってみないとわからないかもしれません。

『FITからFIPへ』の切替が昨年、閣議決定されましたが施行開始される時期は、2022年度、それも当初は高圧・特別高圧のみとなります。すなわち、示された委員長案で2022年度(4月〜)も正確にはFIT制度そのものは継続の予定です。ただし、2019年度までにFIT認定を受けた案件とは全く性格が異なるものであると言っても言い過ぎではないでしょう。実際、情報によっては太陽光発電10〜50kWhの区分のことを‘自家消費型太陽光発電’と表記しているものも見受けられます。今年も継続方針とみられる2020年度に改訂された制度の骨子をおさらいしながら、今回の委員長案を把握しましょう。

1 全量売電が可能な低圧案件はもう増えません! 投資効果が期待できる低圧=産業用(10〜50kWh)は2019年度認定案件まで!

まず、ご相談いただく多くの方が勘違いされている点ですが、2019年度までに認定されたFIT認定案件は、間違いなく、全量売電できます。しかも、自家消費30%以上という‘自家消費に関する地域活用要件’が認定条件に課されているのは低圧=10〜50kWhの産業用太陽光発電の区分のみです。この低圧を含め、全ての区分でFIT(固定価格買取)制度そのものは存続することになりましたが、今回の委員長案ではFIP制度が導入される2022年度は対象が1,000kWh以上に限定。50kWh以上は、希望する事業者はFIP制度に移行できるという内容になってます。20年度は13円/kWh+税だった固定売電単価=FIT価格は、10kWh以上50kWh未満で2021年度12円/kWh+税、2022年度は11円/kWh+税。2年分の価格が示されるとともに、10kWh以上については、解体等積立基準額も示されました。また‘50kWh以上は、(20年度は設定されていない)地域活用要件を設定してFIT制度による支援を当面継続していくのではなく、電源毎の状況や事業環境をふまえながら、FIP制度の対象を徐々に拡大し、早期の自立を促す’という方向性が示されており『FITからFIPへ』の移行を急ぎ、再エネで発電された電力の取引を一般の電力市場へ統合していく道筋があらためて示されました。

2022年度の
太陽光発電(事業用)の支援内容
低圧:10kW〜50kW 未満 余剰電力のみ固定価格で買取る 12円/kW
高圧:50kW〜250kW 未満 発電全量を固定価格で買取る 11円/kW
高圧:250kW〜 競争入札で安い価格で事業者から買取る 入札制

2020年の「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)改正」をわかりやすくまとめ、2021年度の委員長案を補足すると、これまで通り発電した電力を全量売買できるのは、「50kW以上〜250kW未満」の高圧太陽光発電所のみ。(2021年度も継続)「10kW以上〜50kW未満」の低圧太陽光発電所は、農水省の条件をクリアした言わば農家向けのもの以外は、基本的に自分で30%以上を使用し余剰を売電できる。(こちらも2021年度も継続)2022年度FIP制度導入以後、FIP対象の区分を拡大し早期に一般の電力市場と統合を図るということになります。あらためて ‘新たにFIT制度に認定される投資向け低圧太陽光発電所’ は今後は増えないと思われます。

2 FIT 認定案件の中古市場が活性化!? 「中古案件」の市場が覚醒。優良事業者の物件は奪い合いに!

2020年度の改正案で2017年以降の認定案件に対して『運転開始期限5年』という項目が設けられました。政府は2030年度に再生可能エネルギーを主力電源にすることをあらためて強調するとともに、経産相インタビューでも「我が国の電源構成上、再エネの比率を上限を設けずに引き上げていく」方針を公表しました。今後は、太陽光をはじめとする再エネでつくられた電力の需要が中心となり、FIT期間満了後もニーズは高まることが予測されるので、セカンダリー(中古物件)を含めた再エネの電力市場は活性化されつつあるとともに ‘太陽光事業者の淘汰’ が始まっています。すでに市場は太陽光発電に積極的な地域や継続的な事業経験のある事業者の開発物件に人気が集まる様相を見せています。

太陽光は5割が稼働せずに
塩漬けとなっている
太陽光の未稼働・稼働済み状況のグラフ (注)各年3月末時点、出力10万kw以上が対象
(参考資料)資源エネルギー庁

2017年改正FIT法、さらに2018年改正で認定取得から3年以内の稼働開始ができない場合、買取期間の短縮や認定の失効などの措置が定められましたが、実は、経産省が2019年3月にFIT認定を取得した案件のうちおよそ半数が「未稼働」という実態が明らかにされました。未稼働案件が多い背景にはFIT制度導入時の高い買取価格の認定を受け、権利を持ったまま、パネル価格が下がるのを待つ間に開発後につなぐ送電網の空きがなくなったり、開発資金の出し手が減ったりし、開発できなくなるケースもみられました。事実、経産省は18年12月に、出力10kW以上では累計で約2070万キロワット分のFITの認定が失効したと公表しました。2020年度の新制度法案で「一定期間経過後も発電設備を稼働させない場合、FIT認定が自動的に失効する」項目が入れられました。

3 売電収入はどうなる!? 今回、売電金額から天引きされる「解体等積立基準額」が示されました!

2020年度改正案で、それまで ‘努力義務’ になっていた「廃棄費用の積立」が2022年7月までに完全に義務化されることになりました。2017年の改正法で事業計画認定申請時に廃棄費用の積み立て計画申請が義務付けられたのですが、今回、FIT認定されている全ての10kWh以上の太陽光発電設備を対象に、売電終了前10年間「源泉徴収的な外部積立方式」で廃棄費用を積み立てることが義務化されました。

廃棄費用の外部積立イメージ
実際の売電額

積立ては、売電収入から差し引かれる形になり、毎月の積立額は、月ごとの売電量に応じて決まる方針です。一定額が引き落とされるのではありません。また廃棄費用の積立金は、原則、売電期間終了後に一括で戻されます。投資対象として太陽光発電所を保持している方にとっては、収支にかなりの影響があると思われる制度ですが、今回提示された2021年度以降委員長案では、外部積立の基準額が示されました。(下表)

年度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
FIT単価 40円/kW 36円/kW 32円/kW 29円/kW
27円/kW
24円/kW 21円/kW 18円/kW 14円/kW
積立金額 1.62円/kWh 1.40 1.28 1.25円/kWh 1.09 0.99円/kWh 0.80円/kWh 0.66円/kWh